株式会社ゲンロン創業者で思想家の東浩紀氏と、起業家・技術者の桂大介氏が、AI時代における我々日本の生き方やテック産業の方向性について語った。彼らが出演するYouTube番組『東浩紀と桂大介のリベラルテック月報』と雑誌版『別冊リベテク』を通じ、日本の現状と可能性を探っている。
日本のAI産業の挑戦と複数の選択肢
桂氏は、中国の巨大言語モデル(LLM)台頭の根底には人材の蓄積があるとし、日本が直接的な勝負で米中に勝つのは難しいと指摘する。だが、それでも歩みをやめず、多角的に人材育成や国産LLM開発、さらにオープンウェイトの技術を安全に活用するなど複数の道を確保すべきと説く[1][2]。また、国産LLMの批判的風潮に対しては、依存度を下げる寄せ集め技術の活用も自由の確保に寄与し、価値あるアプローチだと擁護した[1][2]。
東浩紀氏は、AIがわれわれ自身を支配するという「疎外」の問題を挙げ、自らが技術の奴隷にならないことの重要性を強調。「技術のブリコラージュ(即興的な組み合わせ)」による道具としての再発明こそがリベラルテックの核心だと述べた[1][2]。
技術の使い方こそが問われる時代
東氏は、インターネットやAI革命は数十年の歴史しか持たず、その技術の使い方がまだ未熟だと指摘する。例えば、ゲンロンは従業員約10名で思想や批評のニッチ分野をネット技術で数億円の売上を維持しているが、これは大手マスメディアに頼る旧来の流通構造に依存しない新しいモデルだという[1][2]。
さらに、コピー機やオフセット印刷が日本の同人誌文化を生み出したように、新技術の本質的価値はその「使い方の再発明」にあると語った。また桂氏は、自身が関わる動画配信プラットフォーム「シラス」の成功もクラウド技術発展がもたらした技術の使い方の革新として位置づけた[1][2]。
ソフトウェアの安定性とAI習熟の難しさ
両者は技術の更新頻度の違いにも言及。例えばGoogle Chromeは頻繁にアップデートを繰り返すのに対し、文章処理ソフトTeXはドナルド・クヌースの方針で完成度の高さゆえに大きな変更は避けられている。これは「道具として使うには完成して止まったものであることが望ましい」という哲学につながる[1][2]。
AIは急速に進化し中身もブラックボックス化しているため、習熟が終わらず、逆にユーザーがAIの奴隷になってしまう危険性がある。東氏は「道具は生き物ではなく死んだものでなければならない」という哲学的視点でこの問題を説明し、ITやAIの進化が「道具」から「エージェント」への変貌を遂げつつあるとして注意を促した[1][2]。
世界のダイナミズムと文明の違い
中国のオープンウェイト推進について桂氏は、ユーザーが手元にLLMを置ける点で自由につながる可能性を示唆した一方で、中国の強い監視社会や政治的制約も指摘した。東氏は中国ITには明確な思想はなく、無思想という実用主義的アプローチで発展しているとの見方を述べた[1][6]。
実際に東氏が中国四川省を訪れ、標高3000メートルの峨眉山にファーストフード店舗が存在するなど独特の文明形態を目撃し、中国の「便利さ重視」の実用主義を身近に感じたという体験も紹介された[1][6]。
技術の自由な使い方で日本独自の未来を
東氏は技術の自由な使い方の再発明を通じ、加速する資本主義の時間に巻き込まれ疲弊することなく、真の自由や主体性を問い続けることが重要だと強調した。また桂氏は単一のスケール追求から脱却し、多様性を認めるリベラルな技術観の必要性を訴えた[1][6]。
このように彼らは、日本が米中の真似だけに終わらず、技術の奴隷になることなく自由な利用スタイルを追求し、ニッチ分野や中小規模の経済圏の活性化を目指すことこそが、AI時代を生き抜く鍵だと説いている。
「技術を作ることよりも、いかに技術を使うかが問われている」(東浩紀氏)
「複数の道を確保し、依存を減らすことが自由を守る道だ」(桂大介氏)
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